みのたけ学びシリーズに参加しての感想と言う名のレポート

このレポートは、みのたけ学びシリーズ座談会「入門編:簡単な手話での挨拶などから」「基本編:日常生活での不便さなどについても」にご参加いただいた、石巻で活動するイラストレーターいぼくまさんに執筆いただいたものです。
 

 
レポート

みのたけ学びシリーズに参加しての感想と言う名のレポート

いぼくま
 
 
ゆびもじ あいうえお表
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本企画をきっかけに、いぼくまさんが制作した「ゆびもじ あいうえお表」です。いぼくまさんの作品としてお楽しみいただいたり、手話を知るきっかけや、勉強のお供に使っていただけると幸いです。
制作:いぼくま(2024年)
 

 
2023年にコーダのドキュメンタリー『私だけ聴こえる』の上映会に参加した事をきっかけに石巻アートプロジェクト様主催のみのたけ学びシリーズの入門編と基本編に参加させていただきました。
 
手話、聾についてほぼ無知の状態のわたしが今回なぜこちらの座談会に参加する事になったのか。 『私だけ聴こえる』の上映会に参加した理由はただ単に興味があったからと言う理由なんですが、その後でこちらの企画に関わるようになるとは夢にも思いませんでした。
 
わたしにとってコミュニケーションとは相手の発言に対して自分の経験を踏まえて物事を捉え発信する、今まではそれが普通だと思っておりました。
 
しかし本当に相手はそれを伝えたいのか? 本当に相手はそれを望んでいるのか? 相手の表情を見て自分の憶測で勝手に判断してるだけなのではないか? と自分の認識を疑うようになりコミュニケーションのあり方について根本から見直し模索する日々が続いておりました。
 
石巻アートプロジェクト様からお話しをいただいた時に内容は理解できるがわたしにできることってなんだろうと焦りと混乱の方が大きかったのですが、話を聞いているうちに「聾の方は見た目ではわからない」と言われたのが非常に印象的でわたしが模索しているコミニュケーションのあり方とリンクしたような感覚になりました。
 
また手話言語によるコミュニケーションのあり方についてみんなで学んでいきたいと言う旨のお話しをいただき、今まで関わりのなかった聾の方の日常生活を知りたい、何かあった時にどう手助けしたら良いのか、どう伝えたらいいのか、会話以外でのコミュニケーションのあり方を学びたいと思い座談会への参加を決めました。
 
入門編、基本編共に石巻市役所福祉課の職員の方による石巻市出前講座から始まり日常生活において手話言語を使う聾者の方のお話しを手話を用いて伺いました。 座談会には実際に手話ができる方も多く参加されていて沢山の方にサポートしていただきながら学ぶことができました。 聴覚障害者と一括りに言っても聴こえの程度、言葉の聴こえ方等によってもコミュニケーションの方法も全く異なると言う事。 耳に障害を持っている方にとって手話での会話が一般的だと誤った認識を持っていたので大変驚きました。 そして顔の表情や体全体を交えて会話するのが手話だと伺いました。 手話が使えないわたしでも顔の表情を作ることやジェスチャーで表現することはできるしむしろ普段も無意識に使っている、日常生活において幅広い年代の方に使えるコミニュケーションのあり方の一つとして簡単に活用できるのではないかと思いました。 座談会中に聾者の方への質疑応答の時間があり聞いたら失礼にあたるのではないか?と感じていた内容についても色々と教えていただきました。 その時にわたしは受け入れてもらえた、歩み寄っても良いんだと言う安心感に包まれたのを感じました。
 
今回の座談会のテーマ「自分とは違う存在や世界観をどう理解していくか」は、特別な事ではなく日常生活において普通に付随してくる事柄だと認識しております。 相手はこう思っているかもしれない。 でも実はそう思っていないのかもしれない。 相手もこれはできるだろう。 でも本当にそうなのかな? わたしが勝手に思い込んで認識しているだけかもしれない。 それだったら、わたしから一歩踏み出してみようかな。 相手発信だけではなく自分から学びにいく、自分から歩み寄る、自分から手を取りに行く。 今回の座談会に参加して当たり前すぎて忘れていた【コミュニケーション】の基本を改めて学べたように思います。 最初は何をしたらいいのかがわからずとても不安でしたが、自分が想像していた以上にインプットすることがあり今はそれらを咀嚼し頭の中で反芻させている状態です。
 
自分が当たり前と認識していることが他者にとって当たり前ではない、これを前提とした上でお互いに歩み寄り受け入れ理解すると言う事はとても大切な事だし自分にとっても大きな課題だと思いました。 わたしは接客に携わるお仕事をしているので実際に聴覚障害者の方と筆談で対応させていただいたことがありますが、これからは手話を使った会話も交えて接客すると言う目標を掲げて自分のできることから無理せず少しずつ手話を学んでいこうと考えております。
 
そして、今回の座談会を踏まえアウトプットの表現としてチョイスしたのが指文字のあいうえお表です。 聾者の方は目をよく使うとのことで、筆談で伝えるにもわかりやすい表現が大事だと言うお話しを伺いました。 そちらを参考にさせていただき老若男女幅広い層へ分かりやすく伝えられるビジュアルにしようと思いこちらを制作いたしました。 (ただ単に自分自身が手話表現でのあいうえおを覚えたかったと言うのもあります。)
 
一般的に指文字表は手の動きのみにフォーカスしている物が多いと思います。 自分らしい作品とは何か?を模索した時にわたしが描く人物は一人一人それぞれがオンリーワンだと言う設定を軸として制作しているので登場人物達に各々のやり方で指文字と口の動きを表現してもらおうと考えました。
 
右利きの人もいれば左利きの人もいる、色々な表情や身につける物、髪型によってもそれぞれの『自分らしさ』の表現だと言う事を感じていただけたら幸いです。
 
最後になりますが、このような機会を設けてくださった関係者の皆様どうもありがとうございました。
 
2024年2月24日 いぼくま
 
 
いぼくま
イラストレーター。
宮城県石巻市出身、在住。
2015年Uターンをきっかけに活動拠点を石巻に移す。
イラスト展示以外にもワークショップの開催や壁画製作等にも力を注ぎ活動の幅を広げている。
2010年〜石巻出身のイラストレーターkurokuma miccoとアートユニットKUMAKANを結成。
2019年〜石巻こけしを製作しているTree Tree Ishinomakiの林貴俊氏とStromboliesを結成。